認知症にならないために気をつけること
2017年、ランセット国際委員会で、以下のことが認知症の危険因子として挙げられました。
このうち、遺伝子以外のことについては対策が可能です。
ただし、これらは認知症を発症した人の生活歴を調べた研究で、それぞれ因果関係が解明されたわけではありません。しかし、危険因子を避けた生活は健康的なライフスタイルであることには変わりなさそうです。できるものから気をつけてみましょう。
〇認知症の種類
まず、ここで対象として考える認知症について確認しておきます。一口に認知症と言ってもいろいろなタイプがありますが、ここでは主な2種類を挙げます。
〇脳血管性認知症
脳の血管の不具合(脳出血、脳こうそくなど)により認知症をおこすものです。
②アルツハイマー病
脳の細胞がどんどん死んでいく病気です。
それでは認知症の危険因子について一つずつ確認します。
①遺伝子
特定の遺伝子ApoE3/4を持っていると、アルツハイマー病を発症しやすくなります。ですが、遺伝子については現在のところ有効な対策はありません。
②小児期の教育歴
認知症予防には生活習慣に気をつけることが有効ですが、教育歴の低い人にはこれが難しいケースがあるようです(日本の教育水準なら問題なさそうですが)。
小児期の教育は脳の基礎をつくる年代でもあり、この時にしっかりとした脳をつくることが、後の認知症発症にも影響してくるようです。
③中年期の聴力障害
耳が遠い人は認知症になりやすいということは、経験的によく知られています。聴覚による脳への刺激の他、コミュニケーションが取れなくなると引きこもりがちになり、さらに刺激が減り、脳の機能が低下してしまいます。
④高血圧
高血圧は血管が傷む病気です。その結果、脳出血・脳こうそく(脳血管障害)といった病気をおこし、脳血管性認知症となります。脳細胞が壊れていくアルツハイマー病との関連は明らかではないようです。
⑤肥満
肥満の人には脳が縮んでいる人が多いとされますが、肥満がその原因というわけではない(不明)とのことです。
ただし、間接的には大きな関連があります。肥満になると悪玉アディポサイトカインという物質が体の中に出てきて、高血圧、糖尿病をおこしたり、脳こうそくの原因となる血栓(血の塊)がつくられやすくなります。
⑥高齢期の喫煙
喫煙者が認知症になる可能性は、喫煙しない人と比べて2倍と言われます。
さらにヘビースモーカーはもっと若い時にガンなどにより死亡している例が多く、もし、このヘビースモーカーが生きていれば、今後認知症を発症する可能性も高いと考えられます。従って喫煙による認知症発症リスクは2倍を超えると推測されます。
⑦うつ病
認知症とうつ病には密接な関係があります。認知症の症状としてうつ状態がおこることがあるほか、反対にうつ状態が続いて引きこもっていると認知症になるケースもあります。
脳こうそくなどによっておこる脳血管性うつ病などは認知症に移行するケースが多くみられます。
⑧身体不活動
身体運動はアルツハイマー病を防ぐ効果があるといわれます。運動により、アルツハイマー病の原因とされる脳内のゴミ(アミロイドβ)がたまることを防ぐことができます。また、脳内で記憶をつかさどる場所「海馬」で脳細胞が増えることが知られています。
⑨社会的孤立
社会的孤立は脳への刺激が減り、うつ状態をきたし、さらに身体活動も不足する状態になります。上記で説明した、様々な面で認知症になりやすい条件を整えることになります。
⑩糖尿病
糖尿病の高血糖(血液の中の糖が増える)では、血管を傷つけて動脈硬化、脳出血、脳こうそくが起こります。また逆に低血糖(血液中の糖が減る)状態になると、脳のエネルギー源が不足し、脳細胞がダメージを負ってしまい、これが認知症の原因になります。
以上、簡単に認知症の危険因子についてざっくりと説明しました。
このうち改善可能なものについて対策を行うことで、認知症発症のリスクを抑えることが期待できます。
参考サイト
イラスト